マツダはなぜ、『ガソリン・エンジン』にここまで拘り続けるのか?
他社がハイブリッドやEVへと舵を切る中、頑なに拘り続ける理由は、その可能性を全然引き出せていないからです。
『エネルギー効率40%』。
これが現状のガソリンエンジンの実態です。現在、最先端のエンジンを以てしても残りの60%は捨てている状態なのです。
クルマを運転していると、エンジンやブレーキが熱くなってきますが、あれは、エネルギーが熱に変換され失われている状態で、実際クルマを動かす為には40%のエネルギーしか使用出来ていないのです。
この現状に対し、マツダは、『まだ、何か出来る筈だ』と考えており、その答えが、今回お話する『スカイアクティブX』エンジンだと言えます。
では、『スカイアクティブX』エンジンとは如何なるものか?という点についてお話したいと思います。
簡単に言うと、
ガソリンとディーゼルエンジンの良い所を掛け合わしたエンジンです。
このお話をするには、それぞれのエンジンの仕組みについて知る必要がありますので、簡単に説明させて頂きます。
いきなり聞き慣れない用語が出てきましたが、『SI機関』とは従来のガソリンエンジンの事を指します。
すなわち、燃料と酸素の混合気を圧縮し、『プラグ』で火を付けて爆発。この運動によってピストンを上下させ、それをタイヤが回転する力へと変換する、という流れです。
一方、『ディーゼル機関』は少し違います。
一番の違いは、『プラグが存在しない点』にあります。
では、どのようにして点火するのか?
『圧縮』による摩擦熱を利用するのです。
通常、空気を急激に圧縮してやると熱が発生します。
その高温になった状態のところに、燃料(軽油)を噴射してやるのです。
このシステムでは、予め高温の状態を作る事で、より少量の燃料で爆発させる事が出来ます。(燃費が良い)
また、この圧縮比(空気を圧縮する力)を上げてやる事でより大きな爆発を誘発出来るのです。(高トルク)
※ただ、爆発力が強い故にエンジン自体の強度が求められ、つい最近まで、ガソリンエンジンは『アルミ製』、ディーゼルエンジンは『鉄製』で作るのが普通でした。その為、ディーゼルは重量が重く、上の回転数まで回らない、という弊害があったのです。
最後に、『HCCI機関』。これが、『スカイアクティブX』エンジンの基本系、換言すれば『スカイアクティブX』はこの『HCCI機関』の改良系だと言えます。
では、『HCCI機関』とは何でしょうか?
日本語訳にすると、『予混合圧縮着火システム』と言います。何か頭が痛くなりそうですが、難しくはありません。
予め(あらかじめ)混合した気体を圧縮着火(ディーゼル方式)で爆発させるシステムです。
あらかじめ燃料と気体を混合させるのはガソリンエンジンの特徴ですが、点火をプラグでは無く、ディーゼルエンジンで使用する圧縮着火を利用する訳です。
では、なぜこんな面倒な事をするのか?
それは、ガソリン、ディーゼルエンジンにはそれぞれ欠点があるからなんです。
◆ ガソリン車の欠点
これは、熱効率が悪い事。冒頭で述べた通り、最先端のエンジンでも40%。半分以上はエネルギーに変換されずに捨てられます。要は燃費が悪いんです。
エンジンとしては、断然ディーゼルの方が優れているのですが、ディーゼルは環境面で不利、というのが現状です。
◆ ディーゼル車の欠点
これは、排ガスによる環境被害です。
ただ、勘違いして頂きたくないのですが、燃料を完全燃焼出来れば理論上、有害物質は排出されません。
有害物質が排出されるのは燃料が不完全燃焼を起こすからなんです。
では、なぜ不完全燃焼が起こるのか?
それは、点火のタイミングにあります。
空気と燃料が完全に混ざった状態で点火できれば、完全燃焼出来ます。
しかし、実際はこれが難しいのです。
燃焼効率を上げよう(少ない燃料で大きな爆発を得る)とすると、圧縮比(空気を圧縮する力)を上げる必要があります。
ただ、そうすると圧縮熱が発生し、予期していたより早いタイミングで爆発が起こる事(ノッキング)があります。
即ち、⑩のタイミングで爆発させる筈だったのに⑦のタイミングで爆発してしまった、という事です。
⑩のタイミングというのは空気と燃料が完全に混ざるタイミング(理想のタイミング)ですので、⑦ではまだ完全に混ざっていない状態です。
となると、酸素が足りない部分は燃え残って『黒いスス』が生まれます。それが、有害物質の正体です。
(焚火などで鍋を使用すると、鍋の底が黒くススが付きます。酸素が足りない為です。一方、家庭のガスだと空気量も調節している為、黒くなりづらい、原理は同じです。)
このように、両者にはそれぞれ優劣が存在しますが、お互いの良い所を掛け合わせてやろう、というのが『HCCI機関』の発想の原点だと言えます。
少し、前置きが長くなりましたので続きは次章にしたいと思います。
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