日本で『中国製品』というと三流品の代名詞のように扱われているが、実際問題、中国企業の躍進は世界的に見て無視出来ないレベルにあるのです。
特に自動車関連で言えばEV車の技術躍進は、正直多くの日本企業を凌いでいると言えます。
1つ確実に言える事は、彼らを過小評価すると必ず足元を掬われるという事です。
私が確信して言える事は、次世代の自動車市場において世界的企業のベスト10を挙げるなら、必ず数社の中国企業がそこに登場する事になる、という事です。
そして、そこから代わりに消えるのは日本企業かもしれないのです。
中国の製品と言うと、『模倣』『低品質』などと言うイメージをお持ちの方も居ると思います。
一部では間違っていませんが、それを全体的なイメージとして捉えると大きく判断を誤る事になります。
中国政府は非常に『したたか』です。
なぜ、中国は市場参入に関して自国企業との合弁を前提条件としたのか?
なぜ、IT企業を中心に頑なに自国への参入を妨害したのか?
これは、善悪でも物事の正誤の問題でもありません。
事実として、現在の中国企業は急激な技術移転に成功しましたし、政府が打ち建てた『壁』により、『アリババ』『テンセント』『バイドゥ』と言った世界的IT企業が誕生しました。
歴史的に見て、あの『グーグル』が覇権を握れなかっった唯一の大国、それが『中国』なのです。
(『グーグル』を単なる検索エンジンではありません。何のビジネスをするにせよネット戦略は今や不可欠です。自社が検索エンジンで上位表示されるか、どうかで成否が変わります。そのシステムを握る企業の力は絶大なのです。)
現在、世界中で販売されているEV車の約4割が中国に存在します。
EV車というと、アメリカ『テスラ社』をイメージする方が多いと思いますが、販売台数で見ると世界3位です。
上位2社は共に中国企業なのです。
現在、中国政府はなりふり構わずEV車の普及に取り組んでいます。
企業にも、購入者にも多大な補助を与え、制度的にも大きな優遇策を打ち出しています。
急激な環境悪化で、『ナンバープレート』の発行を中国政府が制限している為、今や抽選での当選率は1%にも満たないと言われています。
しかし、EV車購入者においては特例で、一定期間待てば制限無く発行されます。
その結果、2013年では僅か6%だったEV車の保有世界シェアが5年間で40%前後まで急拡大しました。
それに伴い、国内にEVベンチャーが多数出現し躍進を遂げたのです。
最近になり、中国政府が海外の自動車メーカーが中国市場に参入する際に地元企業との合弁を義務付けた規制を解除しました。これは、自国の企業が十分戦えると自信を深めたからであり、事実、一定の分野では他社を凌ぐ実力を手に入れているのです。
万全の状態にある中国国内企業に対し、世界の自動車メーカーは昨年、トヨタの豊田章男社長が述べたように、
『規制のスピードに、開発のスピードが追い付いて行かない。』
という状態です。
彼の言う『規制』とは、来年中国で施行される『新エネルギー車(NEV)規制』の事を指しています。
これは、中国で年間3万台以上の自動車を生産・輸入するメーカーを対象に、その量に応じて、NEVの生産実績に応じて付与される『クレジット』を獲得しなければならない、と言う物。
具体的には、国内で販売されるクルマの10%をEV車にしなければならず、仮に足りない場合は『クレジット』を他社から購入しないといけない、という制度です。
これには、ハイブリッドは含まれず、EV、プラグイン・ハイブリッド、燃料電池車のいずれかを指します。
対応に追われる海外メーカーに対し、中国はさらに1歩前に進みつつあります。
中国政府は2020年までに充電スタンドを1万2000カ所、充電設備を480万基を設置する目標を掲げています。
2016年末のデータでは既に充電設備は14万基に達し、北京・上海では2万基を超えています。
また、2015年には新築される全ての住宅に充電設備、もしくはスペースを確保する事が義務付けられており、既存の建築物であっても公共施設や大型駐車場においては10%に相当するスペースをEV関連施設建設の為に確保する必要があります。
このように、既に日本では追い付けないスピードでEV化は進んでいます。
(世の中をドラスティックに変えようとする場合は全体主義的な国家が強いです。
善悪の問題は置いといて、中国は高速道路を作るのに、問答無用でブルドーザーで民家をなぎ壊すような国ですが、民主国家でこんな事は絶対に出来ません。)
この先、EV化は中国やインドと言った『環境問題を抱えた新興国が主導して加速して行く中、これに受身的に対応する先進国の海外メーカー』、という図式で進むと思われます。
現在、世界の自動車メーカーは自動運転(AI化)と、電動化(EV化)という2兎を追わなくてはなりません。
どちらにも膨大な時間と開発費が必要な上、それが予想以上のスピードで進行しているのです。
時代の過渡期を迎え、今から自動車業界では謂わば、『総入れ替え戦』が行われようとしています。
これは、豊田社長が言う、勝ち負けでは無く、文字通り『生き残りを掛けた戦い』に他なりません。
果たして20年後の勢力図はどうなっているのか?
分かっているのは、それが劇的に変化するという事なのです。
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