若者のクルマ離れが囁かれて久しいですが、そんな中でも高い水準を維持しているのが『免許の保有率』です。
自身でクルマを買う事は無くても、就職の際には免許が無い事が不利に働く事もあり、多くの人間が就職前には自動車教習所に通う事になります。
デフレ経済が続き、新卒の初任給が20年以上も変化しない日本において、なぜか免許取得に掛かる費用は年々増加しています。私が免許を取った20年前には20万円程で取得出来たMT免許が、現在では30万円に迫る勢いで増加しているのです。
◆ アメリカ 46.000円
◆ イギリス 36.000円
上記の値段は何かというと他国の自動車の普通免許取得に掛かる費用の標準です。
日本が30万円掛かるのに対し、その1/6以下の価格というのが海外での現実です。
では、日本ではなぜそんな法外な値段を取られるのか?
それは、国が競争を阻害し、事実上の規制産業となっているからです。
この”事実上”というのは、実際に明文化された規制が存在するのではなく、許認可によって事実上の『規制』を行っている事を指します。
まず、『自動車教習所』には2種類ある事をご存知でしょうか?
実は、教習所には『公認』と『非公認』の2種類が存在します。
これは、『公安委員会』からの公認の有無を指すのですが、その違いは、
試験所(免許センター)での実技試験の免除と価格です。
『非公認』の自動車教習所では、価格が安いが教習所で実技試験を受ける必要があるのです。
その為、事実上『有料で利用できる自動車練習所』に過ぎない、という現実があります。
当然ですが、非公認の教習所に通ったからと言って試験所で何かアドバンテージがある訳ではありません。
結果的に、大多数の人は『公認』と呼ばれる教習所に通うしか選択肢が用意されていないのです。
このような批判に対して必ず言われるのが、日本の教習所は質が高いから、事故率と死亡率が低いのだ、という意見です。
しかし、これは本当でしょうか?
・2013年 交通事故死亡率(単位 人 / 10万人)
◆ アメリカ 12.4人 / 10万人 (10位)
◆ 日本 3.9人 / 10万人 (37位)
◆ イギリス 2.8人 / 10万人 (41位)
このデータを見る限り、アメリカと比べるとかなり少ない事が分かりますが、免許取得費用が安いイギリスの方が少ない事が分かります。
そもそも、死亡率では医療のレベルや年間走行距離、人口の過密度と言ったその他の要因が大きく作用する為、正確な因果関係など分かる筈もありません。
(特にアメリカの医療制度の劣悪さは有名です。)
2012年 自動車走行1億キロ当たりの死者数
◆ アメリカ 0.71人
◆ イギリス 0.39人
◆ 日本 0.78人
データの公平性を担保する為に1億キロ当たりで換算すると、実は日本が一番死者数が多い事が分かります。
確かに、交通量や人口密度の面で日本は不利だとは言えますが、イギリスの倍の人数が死亡する程劣悪か、と問われればNOとしか言えません。
このようなデータを見る限り、日本の免許取得制度の正当性は見つかりません。
多くの若者にとって自動車免許は『高価な身分証明書』と化しており、それに対し、このような高額な費用を支払う正当性は無いのです。
このブログでは、以前からクルマを所有する為の高額なコストについて言及してきましたが、それは免許取得から始まります。
30万円もの費用を払った後、クルマを買える資金を捻出出来る若者はどれだけ居るのでしょうか?
今後、テクノロジーの発展によりVR(仮想現実)技術を応用した教習なども十分可能だと思います。
ただ、現在の『規制』で雁字搦めにされた状態ではイノベーションを起こす事など不可能です。
クルマ離れと言うなら、もっとクルマに接し易い環境作りをする必要があるのです。
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