かつて、デザインの小変更で消費を刺激してきた国内メーカー、長い期間を掛けて熟成をもたらす欧州メーカー、モデルチェンジに関する考え方には、そのメーカーの文化が反映されてきました。
『マツダ』の考えは『捕らわれない姿勢』だと言えます。彼らは、常に開発の手を緩めず、必要とあらば『捨て去る』事も躊躇しません。改良のたびに濃度の高い『マツダ色』を抽出するような作業をひたむきに繰り返してきたのです。
今回の改良で目を引くのが、立体的な造形のグリルと、精悍さを増したヘッドランプだと思います。
ただ、その他に関しては余程のマツダファンでもなければ、その変化を捉える事は難しいと言えます。
しかし、先日行った『CX-3』の改良でも言えるようマツダは今回も大幅な改良をアテンザに施しました。
マツダのフラッグシップ・モデルである『アテンザ』は他のメーカーのそれよりもかなりスポーティな味付けがなされています。後席の居住性を最優先するのでは無く、ドライバーズ・カーとしての地位を明確に意識する事が出来るのです。
今回の改良点は、気筒休止システム、夜間歩行者検知機能、鉄板の厚み増による静寂性の追求など多岐に渡りますが、注目すべきは足回りを一新した事。簡単に説明すると今まではバネ上に伝わるショックのピーク値を抑えるという考え方を、抑え込むのでは無く、滑らかにコントロールするという方向性への変化だと言えます。
これによりサスペンションは前後とも構造を一新、ステアリングギアの剛性アップ、ショックの吸収に秀でたタイヤの開発と、徹底した改良が行われています。
また、内装に関してもデザインを一新。個人的に注目すべきは、恐らくクルマの内装としては初の『栓の木』をインテリアに使用している点です。この木は和太鼓や神社建設などに使用される赤みを抑えた独自の質感を持つ木材で、重厚さと落ち着きを室内に演出しています。
今回の改良は一見地味に見えますが、クルマのキャラクターを決定づける足回りを一新するという大改革を断行しました。その評価については追々、発表される事と思いますが、『攻めの姿勢』を明確に打ち出した結果だと言えます。
もともと評価の高かった同車ですが、それを敢えて『捨てる』という選択をしたのです。
個人的にマツダは今欧州で唯一勝負出来る日本メーカーだと思っています。
残念ながらタイミングが悪くマツダの誇るディーゼル・エンジンは正当な評価を受ける素地を失ってしまいましたが、『スカイアクティブX』など二の矢も存在します。
この先、この秀逸な国内メーカーがどのように変化していくか?非常に楽しみだと言えます。
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