バス会社にとって車両の運行コストは経営に直接関わる問題です。
その意味で2階建てバスはバス会社にとって非常に有益な物であると言えます。
なぜなら、サービスレベルを落とさず多くの乗客を運べる同車はバスの運行事業者にとって魅力的なツールであるからです。
高速バスや定期観光バスで採用されている2階建てバスは、その多くが三菱自動車工業(現・三菱ふそう)製の『エアロキング』です。
この車両は、1985年に発売を開始し、当初は高い位置からの眺望を得る事が出来ることから定期観光バスに多くが採用されました。
しかし、1990年代に入り2階建てバスのワンマン運行が規制緩和によって可能になってからは一度に大量の人間を運べる事で、長距離バス事業者がこぞって購入したのでした。
間3年間の発売停止時期があったものの、25年間という長期間販売出来たのは、長距離バスへの需要が原因だったのです。
転機を迎えたのが2010年。排ガス規制が強化された事でした。これにより対応が出来なかった『エアロキング』は製造中止に追い込まれる事になります。
そこで困ったのが長距離バス運行事業者です。当初は外国製の車両を購入していましたが、メンテナンスコストの増加と度々起こるエンジン出火により採用を取りやめました。
JRなど大手は一時50台を超える2階建てバスを所有しており、大事にメンテナンスを行い運行してきましたが、さすがに老朽化からは逃れられなくなってきたのです。
その為、現在は少しずつ他のハイデッカー車に置き換えている状況ですが、一度に運べる人数には限界があり、運航コストは増加傾向にあります。また、比較的居住スペースが広かった2階建てバスでは1人当たりの座席スペース広く設定出来ましたが、ハイデッカー車では限界があります。ただ、だからと言ってスペースを小さくする事は客離れに繋がります。
これらの要因と近年でのガソリン高が重なり、現在長距離バスの運行コストは非常に高騰していると言えます。
私自身、学生時代は非常にお世話になった高速バスですが、益々安くなるLCCなどの格安旅客機などとの価格競争の中で生き残りが難しくなっている事は否めません。
果たして今起こっているEV化がその問題の解決となるのか?
それには巡行距離と充電時間が大きなハードルとして存在しますが、技術進化による解決を見守りたいと思います。
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