一時期、トヨタの『MIRAI』の発売によって脚光を浴びた燃料電池車ですが、最近は話題に上がる事が無くなりました。
一方、テスラ・日産は既にEV車の実用化を果たし、テスラ・パナソニックは先で取り上げたように米ネバダ州で『ギガ・ファクトリー』の操業を開始し、一歩抜きに出た形です。
このように、既に大勢は決まったかに見えた業界勢力図ですが、最近動きがありました。イーロン・マスク率いるテスラ社が400~700人のリストラを敢行したとのニュースが流れたのです。
確かに以前にもリストラをした事はありましたが、これだけ多くの人数、しかも管理職をリストラしたのは初めての事です。
テスラ社は世界に先駆けてEV車の実用化を図り、業界を牽引する立場でしたが、『売れば売るほど赤字が拡がる』というジレンマに悩まされてきました。
今回、新型車の生産の遅れなどの影響で、ついにキャッシュ・フローに問題が生じているのではないかとの憶測が流れています。
一方、忘れ去られた燃料電池車ですが日本ではあまり取り上げられませんでしたが欧州、特にドイツメーカーが関心を示しているのも事実です。
今年9月に開かれたフランクフルト・モーターショウでは、メルセデス・アウディ・BMWが燃料電池車を出品してきたのです。
ドイツメーカーが燃料電池車に関心を示すには理由があります。
ドイツには『アウト・バーン』という、一部において制限速度が無い高速道路があります。通常150㎞前後の速度帯で流れているのですが、EV車はこの速度帯では急速に電気を消耗してしまい、使い物になりません。その代替策として燃料電池車を考えているのです。
ただ、これは悩ましい問題です。全方位政策で両方を追ってしまうと多大なコストとマンパワーが必要となります。
今現在、実用化しやすいのは断然EV車です。燃料電池車ではコスト面で1台生産するのに数千万円は掛かり、インフラの整備にも多額の資金が必要になります。それは、水素の取り扱いには繊細さが求められるからです。
ですので、燃料電池車で行くのであれば1社単独というのでは無理があります。数社が共同で開発・生産を行えればスケール・メリットでコストも下がりますし、まさに今、「ハイブリッド・システム」により得た立場を、今度は燃料電池車でも享受出来ることになります。
これには如何に欧州メーカーを巻き込めるか?に掛かっています。確かに北米は大きな市場ですが、世界的に見ると欧州、特にドイツメーカーの存在感は多大です。これを巻き込めれば燃料電池車で一歩リードしている日本メーカーは、アドバンテージをキープし続ける事が可能です。今後、燃料電池車の行く末から目が離せません。
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