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最新鋭の自動車運搬船はこんなにもスゴイ!!

 

 

商船三井の次世代型自動車運搬船『FLEXIE』シリーズ。

その一番船となるのが冒頭の写真の『ベルーガ・エース』です。

 

まず、目を引くのはその大きさです。

全長199.99m、全幅32.2m、そして、1回の運行で最大6.800台ものクルマを運ぶ事が可能です。

 

 

 

 

1965年、自動車運搬船のパイオニアとして初めて就航した同社は、当時1200台のクルマを運ぶ船を建造しました。

 

高度経済成長により日本メーカーの国際競争力も増加し年々輸出量が増加する中、積載量の増加、環境負荷の軽減というミッションを達成する為に開発されたのが、この『ベルーガ・エース』です。

 

 

 

 

この船の最大の特徴は『リフタブル・デッキ』構造です。

 

 

これは、通常12層で構成される同船ですが、屋根の高さを自由に変更する事により最大14層の階層を設ける事が出来る仕組みです。

 

 

主に乗用車を運搬するイメージの強い自動車運搬船ですが、実際は建設機械など多種多様なクルマを運搬しています。その際に自由に構造を変化させられる事は、積載量を最大化する為には欠かせません。

 

 

また、船の強度を大幅に向上させる事により船内の柱の数を減らし、積載効率を大幅に向上させる事に成功しました。

 

 

 

 

外観上の特徴としては、通常の船舶は船首が尖っているのに対し、同船は流線形の船首を採用しています。

 

これは、パナマ運河を通過できる最大サイズである『パナマックス・サイズ』の制約の中、風圧抵抗を軽減、さらに船体の塗装を改良する事で、海水の抵抗も軽減しています。

 

このように、省エネ効果を追求する事で輸送車1台当たりのCO2排出量を13.7%軽減する事に成功したのです。

 

 

 

 

尚、操舵に関しても最新のIoT技術が投入され、航行中の見張りを高度化、AR技術により航海の情報をリアルタイムに表示する事で危険探知を視覚的にサポートする機能を有しています。

 

また、各所に張り巡らされたセンサーにより、危機の異常を未然にキャッチし、航行不能に陥るリスクを低減し、安全・安心な航海を果たせるよう万全な体制を構築しているのです。

 

 

 

グローバル化時代の物流において船舶は、一度に多くの貨物も運搬できる点において非常に重要です。ただ、他の乗り物と比べ機動性に劣り、急旋回や危険回避の点においては不利な面も多いと言えます。

 

また、多くの荷物を運べるという事は半面、事故などによる貨物の破損には多大なダメージは甚大です。

仮に7000台のクルマを積んだ状態で船が沈んだとなると、直接的な損失だけでは無く、その後処理を含め膨大な費用が発生します。

 

(当然、保険は加入済みだと思いますが…。)

 

その為、その安全を担保する為のテクノロジーは非常に重要だと言えます。

 

 

 

 

今年就航した『ベルーガ・エース』ですが、同型の船舶が将来的にあと3台建造される事になっています。

となると、1度に2万台以上の運搬能力を持つ事になり、かなり思い切った経営判断と言えます。

 

 

私自身、海運の業界についてはあまり詳しくはありませんが、海運市況は景気の動向やエネルギー価格に敏感で値動きが非常に激しい市場というイメージがあります。

 

 

こういう経営判断を担う人ってのは、本当に大変だと思います…。

 

建造には何年も掛かる訳で、その先数十年の景気予想やエネルギー環境まで予想しないといけません。

 

何ともスゴイ世界ですね…。