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【クルマ屋さんのお仕事】オークション編

 

 

クルマの販売店や買取店において、非常に重要な業務がオークションです。

販売店にしてみれば『仕入れ』になりますし、買取店においては苦労して仕入れたクルマの『現金化』を意味します。

 

中古車業界において、非常にギャンブル性が高く、尚かつ、実力が試される業務で、大抵の場合は店長や専任の人間が取り組む事になりますが、今回はその流れを『買取店』にフォーカスしてご説明していきたいと思います。

 

 

1、仕上げ作業

 

 

買取店において、買取が決まり、クルマが店に入庫すると内外装を徹底的に洗車します。この一般的に『仕上げ』と言われる業務は、ただ洗車するだけでなく、『再査定』の意味もあります。洗車しながらクルマの状態を確認し、傷、修復歴など、間違いが無いかを確認するのです。

 

査定時に汚れているクルマは、この段階で予期せぬ傷が出てくることがありますので、予め想定した査定が必要になります。

 

 

 2、出品会場(出品コーナー)の選定。

 

 

ここからは具体的なオークション業務となります。

 

まず、日本中で数百カ所ある『オート・オークション』の中でどの会場を選ぶか?の選定です。

 

基本的に大きな会場の方が、『バイヤー』の数も多いですし有利です。ただ、会場が遠いと、その分『陸送』にお金が掛かりますので、総合的な判断が必要になります。

 

また、車種によっては得意な会場があります。例えば商業車が有利な会場、高級車は東京近郊の会場、四駆は雪国の会場、と言った具合です。

 

会場が決まると、次は『出品コーナー』です。それぞれの会場は『出品コーナー』を設定しており、例えば『ワンオーナー車コーナー』や『無事故車コーナー』『輸入車コーナー』『軽コーナー』といった具合です。

 

 

 

 

【買取車】の特性にあった会場を選ぶ事が重要ですが、『コーナー』により出品料の違いがありますので、経済的観点からの判断も必要になります。

 

また、『セリ』が行われる時間帯も重要で、大きな会場になれば台数が多い為、夜中になる事もあります。そうなると、応札はかなり限られますので注意が必要です。

 

 

 3、出品表の作成、及び陸送手配

 

 

出品会場が決まると、その会場指定の『オークション出品票』の作成に入ります。

上の画像は、左が出品表、右側が車両画像になります。

 

オークション会場に車両が搬入されると、オークション会場専属の検査員がクルマの査定を行い、画像を撮った後、オークション会場のホームページに掲載されます。バイヤーはこの情報を基に、当日、どのクルマを狙うか、決める訳です。

 

そこで、重要になってくるのがこの『出品表』の存在です。特に、『セールスポイント欄』などはオプションなど正確に調べて記入する必要があります。これを見てバイヤーに『欲しい!!』と思わせる事が重要なのです。

 

一方において記入間違いはペナルティ(罰金)の対象になります。多いのが『グレード間違い』『色間違い』などがあります。その場合10万単位の罰金を科せられる事もあるので、記入には細心の注意が必要です。

 

 

これが、終わると陸送の手配です。ここで大切なのは『いつ、会場に車両が到着するか?』という点です。

例えばセリの前日などギリギリに搬入されてしまうと、セリの順番も遅くなりますし、ネット上に画像がアップされないという事態になります。そうなると、応札に影響しますので、余裕をもった搬入が重要です。

 

 

 4、セリ開始値、売り切り価格の設定、及び調整。

 

 

セリの開始価格は出品店が決める事が出来ます。例えば相場100万円のクルマを1万円スタートにする事も90万円スタートにする事も出来る訳です。ただ、セリが長すぎるとバイヤーもダレますので適度感が必要です。また、開始価格が高過ぎると『売り切り価格』も高いんじゃないの?と思われバイヤーが冷めてしまいます。

 

次に『売り切り価格』ですが、簡単に言うと『これ以上の値段に行けば売って良いよ、という価格』です。業界ではこれを『離す』と言いますが、この価格の設定がオークションの『キモ』となります。

 

これら価格はオークション前に伝える事も、また当日セリの応札状況などを見てリアルタイムに判断する事も出来ます。

 

オークションの『カナメ』はいつ『離す』か、によります。このタイミングによりバイヤーの熱気が大きく異なってきます。

 

例えば、相場価格よりかなり安いところで『離す』と当然バイヤーは『熱く』なります。最後に応札ボタンを押した人が落札出来る為、熱くなるとつい余計に押してしまうのです。これが、価格が相場以上に跳ね上がり、いわゆる『跳ねた!!』という状態です。

 

ただ、バイヤーの応札が少ないと逆に相場以下の値段で落札されてしまい損をしてしまいます。

 

一方、『離す』のが遅いとバイヤーは冷めてしまいます。この場合は基本的に相場以上の価格は付きにくく、『流札』という事態も考えられます。

『流札』になると翌週のオークションに再出品となる為、新たに出品料を要しコストが嵩んでしまいます。

 

5、書類発送

 

 

運よくクルマが落札されると、最後に行うが『書類発送』です。

書類とは、名義変更書類やクルマの付属品(スペアキーやリモコン等)、取説・保証書などを指します。これらの書類は盗難の可能性から車両と別に発送します。

これらの書類を落札から1週間以内にオークション会場の書類課に発送すれば、確認後、代金が入金されるシステムになっています。仮に発送が遅れれば1万円 / 1日の罰金が発生します。

 

 

以上がオークションの流れになります。

 

クルマ屋にとってオークション業務は一番楽しく、一方において緊張を強いられる業務です。

自分たちで苦労して買取ったクルマをいかに高く売るか?、そこには明確なテクニックが存在するのです。

 

実際、クルマ業界ではこのオークション間で転売を繰り返す『回し屋』と言われる職業も存在します。

例えば、Aという会場で安く落札したクルマをBという会場に運び売却。差額で生活する職業です。これには高度な相場観と判断力が必要ですが、現在でも少なからず存在します。

 

クルマ屋を長く続ける人はこのオークションのギャンブル性のような物に魅了された人も少なくありません。私もその一人ではありますが、まさに「醍醐味」とも言える瞬間ですので、興味のある方は経験してみるのも良いのではないでしょうか?