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消費者不在のカタログ燃費、いつまで続けるの?

 

昨日ニュースになったスバルの燃費データ偽造疑惑。率直に思う事は仮にスバルが偽造だとするならトヨタは違うのか?という事。

 

現在燃費計測に採用されているJC08モード。過去実燃費に近づけるよう様々な方法が取り入れられてきましたが、正直意味がないというより、近づける気が無いと断言しても良いです。

 

現在、燃費が『売り』のハイブリッド車では実燃費とカタログ燃費の間に4割以上の乖離があります。極めて残念な事ですが、日本基準の燃費は正しくない。

 

25㎞ vs 13.5㎞。これは何かというとトヨタ『ヴィッツ』でのリッター当たりの燃費。日本基準(JC08)とアメリカ基準(EPA)の比較になります。日本で計測すると25㎞でアメリカで計測すると、なぜか13.5㎞。

 

プリウス(2016年型)に関しては40.8㎞ vs 21.98㎞となります。

それでは、アメリカの基準は厳し過ぎるのでしょうか?

もちろん違います。日本では『カタログ燃費は実燃費の6割程度。』という考え方が常識になっています。

 

当たり前の話ですが、実データと4割も乖離している数値に意味はありません。

 

では、なぜこんなバカげた事が起こるのか?

通常、燃費の審査には1台当たり5日間の時間を要します。しかし、エンジン・トランスミッション・装備内容の重量などを考えると1車種当たり5、6台の審査が必要になり時間が掛かり過ぎます。

 

その為、燃費計測に必要なある項目に関して、『測定値』に代わる『設計値』の採用が認められているのです。

では『設計値』とは何か?分かりやすく言えば『計算上、この数字が出ると思って設計しました。』という数字です。いわば、『机上の空論』とも言えます。

 

その上、日本では燃費計測においてメーカーの専任ドライバーが行います。彼らはいわば『職人』のようなもので、燃費を稼ぐ術を心得てます。

一方、アメリカでは第3者機関に持ち込み、そこのドライバーが計測する事になります。その為、実燃費に近い数字が出る事になるのです。

 

この問題でややこしいのはEV車です。

例えば、最近発売になった『日産 リーフ』。メーカーはCMでも1回の充電で400㎞の走行が可能と謳っています。しかし、これもJC08モードでの計測値なんです。実際走れる距離は250~300㎞となります。

 

過去三菱自動車のような燃費偽装を擁護するつもりは毛頭ありません。ただ、実燃費から4割もかけ離れた数値が偽装でない、と言い切れるでしょうか?

はたして、三菱とトヨタの違いは??

 

彼らは消費者の存在をどう思ってるのでしょうか?

仮にこれがクルマで無かったら、例えば冷蔵庫だったとしましょう。消費電力にメーカー発表値と4割かけ離れていたら?恐らくそれは『偽造』だと言われるはずです。

 

では、なぜクルマなら許されるのか?

それは単に『慣らされている』に過ぎません。

 

実際、『なんで、こんなに違うの?』とお客さんから聞かれる事は良くあります。

その度に苦笑いで答えるのですが、実は1番疑問に思ってるのは私だったりします。

 

消費者は何百万もする商品を買うのに正しい情報が与えられない、という事実にもっと怒らないといけません。今の制度は消費者に対してフェアでは無いのです。

 

『正しい』ルールで測定しても『正しくない』数値しか出ない現ルールで何が不正なのか?を論じる事は不毛です。グローバルな産業である自動車業界で、日本だけがこのような事をして許される訳がありません。変えるべきは日本のシステムであり、消費者不在の燃費競争をしてきた企業自身です。

少しでも早くこのバカげた競争が無くなる事を切に祈りたい気持ちです。