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国産自動車メーカーのEV化対応。

今、自動車業界は過渡期を迎えています。

 

キーワードは『自動運転』と『EV』です。

クルマから、エンジンとトランスミッションが必要なくなり、さらに運転する人間さえ必要なくなるという、まさに自動車の根底を換える時期を迎えているのです。

 

 

残念ながら国産メーカーはこの両面において劣勢に立たされています。

 

EV化に関しては、現在のドル箱であるハイブリッド・システムが本格的なEVへの移行の妨げになってしまっている事実があります。トヨタが開発したこのシステムは同社を一躍世界一の自動車メーカーという地位に伸し上げ大成功を収めました。この成功体験が現在、逆に重石となり同社の将来に大きな不安を与えています。

 

EV化の最大の問題はガソリン車と比べ部品数が半減してしまう事です。極論すれば、今の部品メーカーの半分が必要なくなるという事です。

その為、必要になってくるのがグループ企業の再編です。

ただ、これは非常に厄介な問題です。企業が半分で済むなら当然それに関わる人間も半分で済むからです。

 

自動車のような大きな企業が工場を作る場合、大きな雇用を生み出す事から誘致する自治体から何らかの補助を受ける事が多いです。その為、企業は自らの意思だけでリストラする事は出来ません。必ず自治体との調整が必要になるのです。

 

この点で、簡単にリストラが出来ない日本の雇用習慣は企業にとって不利に作用してしまう事は否定出来ません。

 

 

もう1つのキーワードは『自動運転』です。

 

日本は、カメラや超音波センサー、それにミリ波レーダーなどのハード面においては強みを持っています。

ただ、肝心のソフト面においては大きく遅れているという事実があります。

 

現在、自動運転に関するデータを一番取得しているのは『グーグル』です。

 

 

上の表は現在自動運転の実走テストにおいて最も前向きと言われ環境が整備されている米カルフォルニア州でのテスト走行距離を現したものです。

当然他のメーカーもそれ以外での土地での実験も行ってますが、各社の開発、テスト状況を表していると言えます。

 

見て頂ければ分かりますが、まさに断トツと言って良い結果と言えます。

 

パソコンにおいてOSが重要なように、ソフトの世界標準をどこが握るかという事は非常に重要な問題なのです。この点に於いて日本は非常に遅れていると言えます。

 

現在、自動車メーカーの中でこの分野に一番優れているのは米『テスラ社』だと言われていました。自動運転には定められたレベルがあり、その向上を各メーカーが凌ぎを削っているのです。

 

 

2017年7月、ドイツのアウディ社から衝撃的な発表がありました。それは世界初のレベル3に相当するシステムを搭載した市販車を発売するというものでした。

 

このレベル2と3の間には明確な差が存在します。それは運転の主導権がどちらが持つかという点です。②は人間であり、③はクルマ自体が持つ事になるのです。

 

ただ、現在の法制度では運転者が全く関与しない状況での走行は許されていませんので、法改正まで念頭においた対応が必要になってきます。

 

また、それ以外にも今までガソリンによって得られていた税収を何で補完するか?また。EV化に伴う余剰人員をいかに配分するか?充電などのインフラ整備をどうするか?増加する電力使用量をどうカバーするか?など問題は山積してます。

これらは一企業として対応出来る範疇を超えており、国家と企業が連携し解決していかなければなりません。

 

EV化は私達が思ってる以上のスピードで進行しています。これに対応出来るかどうかには日本の明暗が掛かっていると言っても過言ではありません。なぜなら、自動車に関連する税収は最大級のボリュームを持っているからです。

 

恐らく10年後の勢力図は今とはかなり違ったものになってる筈です。そこで日本企業がどの位置を確保出来るか、若干の不安を感じずにはいられません。