最近、マスコミでは製造業の不正・危機管理の甘さが連日伝わっています。
スバル・日産における無資格検査員の問題、自動車ボディーには欠かせない神戸製鋼の品質不正、どれも物作り日本の地位を失墜させるに十分な出来事です。
そんな中、エアバックメーカー『タカタ』の経営譲渡が決定しました。
譲渡先は中国資本傘下の米自動車部品メーカー、キーセーフティ・システムズ(KSS)となり価格は1750億円。
最終的には負債額1兆800億円という製造業では戦後最大の倒産劇となってしまいました。
現在の高田社長は創業家の3代目。初代が滋賀県彦根市で創業し、2台目がシートベルト・エアバック事業に参入。一時は時価総額2000億円を超える超優良企業でした。
それが、たった1回の問題で倒産まで追い込まれたのでした。
この問題は先の3社とは異なり意図した不正ではありません。
エアバックのインフレーター(膨張装置)の不具合が問題であり、今日現在まだその検証さえ終わっていないのです。
経済のグローバル化はベンチャー企業が一夜で世界のメジャープレイヤーに躍り出るチャンスを与えただけでなく、歴史ある企業が一瞬で倒産まで追い込まれる危険性をもたらしました。
ただ、今回は『タカタ』に問題が無かったのか?と問われれば答えは『NO』です。
問題への対応が遅すぎたのです。
事が起きた時にそれを過小評価してしまったが故、被害の拡大を招いてしまいました。
当然、消費者団体や自動車メーカーから問題点が指摘されたにも関わらず説明責任を果たさず、リコールを拒否。その結果不信感を与え『殺人エアバック』とう文字が新聞各社の記事にのぼるようになってしまいました。
これはかなり不味い対応でした。
そもそも、このエアバックは自動車各社の要請からホンダなどのメーカーと二人三脚で開発されたものでした。その中で、タカタだけが責められる事に不満はあったとは理解出来ますが、もし、早期できちんとした対応を行っていれば、そこまで糾弾される事態にはならなかった筈です。
非常に皮肉な話ですが、同じくタカタ姓である『ジャパネット・たかた』の創業者である高田明氏は危機管理のお手本と称されています。
2004年にジャパネットたかたの顧客情報が流出するという事件が起こりました。
この際高田社長は全ての通販番組を49日間に渡り自粛しました。その上で原因の検証と再発防止策の立案を行います。結局その49日間により約150億円の減収になりましたが、その問題に真っ向から立ち向かう姿に同社の信用はより強固な物となったのでした。
それによりその後2年間で200億の売上増を達成するのでした。
このように現在リーダーの危機管理意識というのは非常に重要です。
これにより一方は歴史ある企業を倒産に追い込み、また他方はその失敗をも成長の糧として増収を勝ち取りました。
この対応の違いは多くの企業もモデルケースとなるはずです。不正というのは話にもなりませんが、有事の際の対応という面において非常に多くの事を学べるはずです。彼らの対応がどのような結果を招いたか、もう一度再認識する必要があると思います。
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